モダナイゼーション(Modernaization)とは、古いIT資産(レガシーシステム)を最新技術に対応させて近代化を図ることを言います。
モダナイゼーションが注目されている理由
モダナイゼーションは、企業の戦略で行うものと否応無しに行わざるを得ないものの2種類があります。代表的な事象を6つ紹介します。
1 テクノロジー
- 新たなプラットフォームやOSに対して投資をしない
- ユーザ数が少なく、採算性が低いためベンダーがライセンス費用を上げている
- 市場が小さいため他製品へのマイグレーション(移行)ツールが存在しない
- OSおよびミドルウェアが業界標準に対応していないために、他のプラットフォームとの互換性がない
- 過去のセキュリティ対策のみで防御力が弱い
2 アプリケーション資産
- システム稼働時は最新状態だったが、保守運用で体制が縮小したためにシステム維持が困難
- アプリケーションのロジックが古すぎて現状ビジネスにマッチしない
- 追加仕様に対応するために、多大な工数が発生する
- 要件変更に対する影響調査を人が行うため、手間と時間がかかりすぎる
- 設計書などが残っておらず修正が困難
3ヒューマンリソース
- ドキュメントが存在せずプログラムのソースコードが唯一の情報であるため属人的になりやすい。
- メインフレームの言語を読み書きできるエンジニアが退職したため、保守運用が困難になる
- 旧式のテクノロジーの習得に対するモチベーションが低い
- 新人社員のキャリアを考慮した際に、旧式テクノロジーを長期経験させられない
- 開発経験が少ないまま保守運用を担当するため、システムの設計思想を理解するまで至らずユースケースまで想像力が及ばない。従って、システム全体を見るための視点を養えない。
- 圧倒的に少ないリソースのため既存の保守に限界がある
4 ビジネスモデル
- 各業界でビジネスモデルの変革が起きつつあるが、レガシーシステムでは対応できない
- IT資産をフル活用したサービタイゼーションを実現できず、競合他社からビジネスモデルの面で一歩遅れる
- 顧客ごとに最適な商品・サービスを提供するカスタマイゼーションに対応できない
- 分断されたシステムで業務プロセスの合理化ができない
5ハードウェア
- 製品の延長サポート終了期限が迫っている
- ハードウェア自体のサポート終了が間近で迫っている
- もはや交換部品の生産がストップしている
- サポート停止を機に既存のIT資産の見直しが求められている
6. 最新テクノロジー
- AI(Artifical Intelligence)やIoT(Internet of Things)、ブロックチェーンなどに普及している最新技術に対応できない
- 爆発的なデータ量増加に追従できていない
- クラウドコンピューティングと連携した「ハイブリッドクラウド」による柔軟性の高いインフラが求められている
- モバイル対応できていない
以上のように、レガシーシステムには多くの問題が残されています。古いIT資産を抱えている企業では今後どういった対応をするかによって、ビジネスの生産性や成長速度が大きく変わってきます。
モダナイゼーションを実行するための3つの方法
モダナイゼーションを実行するための代表的な3つの方法を紹介します。
1.リプレース
リプレースとは、既存のシステムからなる現行のレガシーシステムを、新しいパッケージソフトへ移行する方法です。新しいIT資産を構築するためコストと負荷はかかりますが、環境変化に伴う業務プロセスの見直しなど抜本的な業務改革に有効な方法です。
【メリット】
- 新しいビジネスモデルへの対応
- 今までとは違う業務プロセスを構築でき、非常に高い生産性向上・業務効率化を得られる可能性がある
【デメリット】
- 初期投資の増大
- 業務プロセスの見直しによってプロジェクトが長期的になり、コントロールが難しい面がある
2.リライト
リライトとは、古い開発言語を新しい開発言語に書き換える手法です。例えば、COBOLから.NETなどに置き換える)。レガシーシステムにおける既存機能や仕様はそのままに、新しい開発言語に移行することでリプレースにかかるコストを抑えることができ、最新技術への対応も可能にします。レガシーシステムにおいてカスタマイズを大量に行なっている環境に有効的です。
【メリット】
- 既存のITリソースと技術者を活かし、リプレースよりもコストを抑えることができる
【デメリット】
- 適切なリライトのためには、まず既存システムのドキュメントがきちんと管理され、開発に携わった技術者も必要なため要件としては最も厳しくなる可能性がある
3.リホスト
リホストとは、サーバやOS、ミドルウェアといったITインフラを刷新したり、仮想化技術に対応したりする方法を指します。レガシーシステムの延命措置として採用されることが多く、ハードウェアなどの保守サポート切れに対応できコストも抑えられるので、選択肢として上がりやすい方法であります。
特にクラウドを採用したリホストが最近では多く、ITインフラをクラウドへ置き換えることによって災害時等のBCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)や運用コストの低減にもつながります。
【メリット】
- クラウドにおけるITインフラの調達は非常に容易なため、迅速かつ正確に柔軟性の高いITインフラを要域でき、コストの適正化やBCP策定なども行いやすくなる
【デメリット】
- レガシーシステム自体をリプレース/リライトするわけではないため、クラウドを採用してもソフトウェア面のIT資産は古いままであり、場合によっては新しいビジネスモデルや最新技術に対応しづらい
上記の例を組み合わせて行うこともありますが、一長一短あるため、どの方法が最適かは既存のITシステム環境によって異なるためよく考える必要があります。
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