現代のビジネスシーンでは、データサイエンスやAIといった言葉が頻繁に飛び交いますが、数学やプログラミングに苦手意識を持つ方も少なくありません。しかし、ビジネスパーソンにとって本当に重要なのは、高度なコードを書くことではなく、身近なツールであるExcelを使ってデータを読み解き、現状を正しく把握する力です。本記事では、統計学の基本的な考え方と、データとの正しい向き合い方について、Excelを中心としたアプローチで解説します。
1. 統計学は「Excel」だけでいい

データサイエンティストやマーケターのように、PythonやRといったプログラミング言語を駆使して複雑な分析を行う必要はありません。実は、プロのデータサイエンティストの仕事の多くも、平均値の算出やヒストグラム、円グラフ、クロス集計といった、**中学数学レベルの知識でできる「データの可視化」**にあります。
Excelの基本的な関数を使いこなし、状況をパッと理解できるようになること。それが、ビジネスパーソンがまず目指すべき「統計リテラシー」のゴールです。Excelは、多くの企業で標準的に利用されているツールであり、特別なスキルや追加のソフトウェアを必要とせずに、すぐにデータ分析を始めることができます。
2. 統計学の2大分類:記述統計と推測統計

統計学には大きく分けて2つの種類があります。この違いを理解すると、統計に対する誤解が解けます。
- 記述統計: 集めたデータの平均や分散などを計算し、そのデータが持つ特徴や構造を把握すること(例:内閣支持率、平均年齢など)。記述統計は、データの要約と可視化に焦点を当て、データの全体像を把握するのに役立ちます。
- 推測統計: データから背後にある因果関係や相関、真の値を推定すること(例:回帰分析、分散分析など)。推測統計は、サンプルデータから母集団の特性を推測し、仮説検定や予測モデルの構築に利用されます。
重要なのは、**「大抵のことは記述統計で見えてくる」**ということです。東大の基礎統計学でも、まずは記述統計を徹底的に学びます。基本的なグラフや数値でデータの正体を見抜く力が、すべての分析の土台となります。記述統計をマスターすることで、データの傾向やパターンを把握し、ビジネス上の意思決定に役立てることができます。
3. AIや機械学習は「自動化」に過ぎない
AIや機械学習を「別世界の技術」と捉える必要はありません。これらは、人間が目で見れば判断できること(例:写真が男性か女性か、リンゴかナシか)をコンピューターに肩代わりさせ、自動化しているだけの話です。
複雑なアルゴリズムの中身まで自分で組む必要はありませんが、そのベースには統計的な理解があります。中身をブラックボックスにせず、「何が起きているのか」を腹落ちさせておくことが、専門家と連携する上でも重要です。AIや機械学習の背後にある統計的な原理を理解することで、その結果をより適切に解釈し、ビジネス上の意思決定に活用することができます。
4. 事例で学ぶ:ヒット作『ウマ娘』のデータ分析
2021年に大ヒットしたスマホゲーム『ウマ娘 プリティーダービー』を例に、現場でのデータの使われ方を見てみましょう。
- 現状把握: リリース1週間で約90万人、5週間で200万人を突破したというデータから、成功パターンであることを確認します。
- 顧客理解: ユーザー層を可視化すると、当初は20〜30代男性が中心でしたが、徐々に女性や10代にも広がっている実態が見えてきます。
- ニーズ特定: 「育成の楽しさ」「ビジュアル」「ストーリー」の3点が評価されており、奇をてらわない「王道の成功」であることが分かります。
ここで最も大切なポイントは、「データは答えを与えてくれない」ということです。データが教えてくれるのは「実態」まで。その情報を踏まえて、「次は女性向けを強化するのか、それともコアな男性層をさらに掘り下げるのか」という意思決定(ディシジョン)を下すのは、あなた自身の仕事なのです。データ分析は、意思決定をサポートするためのツールであり、最終的な判断は人間の知性と経験に基づいて行われるべきです。
まとめ:データは「判断」のための武器
統計学を学ぶ最大のメリットは、圧倒的な力を持つ数字を使って「現状を正しく把握できる」ことにあります。
高度な分析手法に惑わされる必要はありません。まずはExcelで基本のグラフや表を作り、そこから何が起きているのかを考える。この習慣こそが、現代のビジネスにおいて最強の武器となります。Excelを活用してデータを分析し、現状を把握することで、より効果的な戦略を立て、競争優位性を確立することができます。
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(たとえ話)
統計学を使いこなすことは、**「霧の中でライトを点けること」**に似ています。ライト(統計データ)は道そのものや目的地を作ってはくれませんが、目の前の路面状況や障害物を照らし出し、あなたが自信を持ってハンドルを切るための助けとなってくれるのです。統計データは、不確実な状況下で意思決定を行うための貴重な情報を提供し、リスクを軽減し、成功の可能性を高めることができます。


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